2015-04-19

天網島時雨炬燵‐紙屋内の段


大阪・国立文楽劇場で上演された「天網島時雨の炬燵‐紙屋内の段」のあらすじ、簡単な物語の進み行きを紹介する。
当座の観劇ガイドとするために、最も簡潔かつ適確に纏められている日本芸術文化振興会発行の本公演のパンフレットから写した。

天網島時雨炬燵‐紙屋内の段

享保五年(一七二〇)十月の紙屋治兵衛と紀国屋小春の心中を扱った近松門左衛門作「心中天網島」は、同年十二月大坂竹本座で初演され、浄瑠璃・歌舞伎共通の題材となり、人物像や趣向に工夫が加えられました。「紙屋内」の前半は、「心中紙屋治兵衛」、後半は「置土産今織上布」から再構成されたものです。
治兵衛の恋敵の太兵衛は、治兵衛と小春の仲を裂こうとは謀っていますが、ちょんがれ節で治兵衛のことを謳う伝界坊が来合わせ、企みを孫右衛門に暴かれてしまいます。
小春を思い切ったはずなのに、ふぬけた様子の治兵衛。炬燵に伝わる夫の涙を見つけたおさんは、男の未練に愕然とし、妻としての恨み言がこぼれます。相手の受け答えに反応し、人物の感情が変わってゆくのです。"親にも替えぬ恋"を諦めた小春の態度に感じたおさんは、小春の命を救うため、子どもの衣類を質種にする辛さに胸が詰まります。夫婦の苦心を破綻させた五左衛門の言動には含みが持たされています。
治兵衛と小春は夫婦の盃を水盃で交わし、未来が暗示されます。五左衛門の本心は、孫お末の白無垢に認めた文の読み上げで分かる技巧が施されています。おさんの出家を知り、夫婦の感情は高まるものの、治兵衛が太兵衛らを手にかけてしまうため、心中する運命から逃れられないことになります。
-平成27年「4月文楽公演」パンフレットより

人形浄瑠璃文楽 平成27年4月文楽公演

第1部(午前11時開演)
靭猿(うつぼざる)
吉田玉女改め二代目吉田玉男襲名披露 口上
襲名披露狂言
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)‐熊谷桜の段/熊谷陣屋の段
卅三間堂棟由来(さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい)‐平太郎住家より木遣り音頭の段

第2部(午後4時開演)
絵本太功記(えほんたいこうき)-夕顔棚の段/尼ヶ崎の段
天網島時雨炬燵(てんのあみじましぐれのこたつ)-紙屋内の段
伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)‐火の見櫓の段

0 件のコメント :

コメントを投稿