2015-01-23

冥途の飛脚

昨年、大阪の初春文楽公演ではこの作品の改作「傾城恋飛脚」の中から「新口村の段」が上演された。
面白いことだが、今年の初春文楽公演と昨年のそれを両方観劇した者には、先にストーリーの完結を観て、1年後にその前段を観たことになる。
また、初春文楽公演は、物語自体にそれほど重点を置かず「道行もの」をはじめとする華やかな人形の舞踊、美しく豪快な演奏を新春ならではの背景を重視して上演される。

冥途の飛脚
題材は、宝永六年(一七〇九)頃に起こった亀屋忠兵衛の横領事件で、作者の近松門左衛門は、登場人物の行動を時に批判的に、時に哀れみを籠めた表現で描いています。初演は大坂竹本座で、正徳五年(一七一一)七月以前と推定されています。
主人不在の操業の危うさが描かれるうち、忠兵衛が登場します。催促に来た八右衛門も遊び仲間で、戯れに贋小判、贋証文の作成に加担してしまうなど、後の悲劇を思わせます。花街の灯りに心乱れ、魂が抜けてゆく忠兵衛の様子は、"羽織落とし"と呼ばれる演出で表現されます。
梅川を慰める浄瑠璃の演奏は、名妓夕霧が遊女には誠意はないとの批判に反論する「三世相」(近松門左衛門作)の利用で、梅川の心情を代弁するものです。花街はハレの場所、見栄と粋を最も大事とするところです。忠兵衛は自分ばかりか、好きな女までも侮辱されたと思い込み、小判の封印を切ってしまうのです。封印を途中で切ってしまうことは、公金を横領したのと同じことです。忠兵衛に翻意を促すために、梅川が自分は身を落としても忠兵衛を養うと言うクドキがききどころみどころです。獄門への踏み出してしまった忠兵衛は横領金を湯水のように浪費するばかりです。すべてを打ち明けられた梅川は忠兵衛と運命を共にすることを誓い、作者は"男"と"女"と表現していた二人を"夫婦"と呼ぶのです。
みぞれ交じりの雨の中、夫婦は駕籠に同乗し、忠兵衛の故郷大和の新口村へ向かいます。死に直面して、人の子としての弱さ、親への懐かしさが胸に湧く思いを描きます。

-平成27年「初春文楽公演」パンフレットより


国立文楽劇場開場30周年記念
人形浄瑠璃文楽 平成27年初春文楽公演

第1部(午前11時開演)
花競四季寿(はなくらべしきのことぶき)-万才・海女・関寺小町・鷺娘
彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)-杉坂墓所の段/毛谷村の段
義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)-道行初音旅

第2部(午後4時開演)
日吉丸稚桜(ひよしまるわかきのさくら)-駒木山城中の段
冥途の飛脚(めいどのひきゃく)-淡路町の段/封印切の段/道行相合かご



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