2014-11-18

奥州安達原

現在、11月文楽公演(大阪・国立文楽劇場)の第2部で上演されている「奥州安達原」のあらすじ、簡単な物語の進み行きを紹介する。
当座の観劇ガイドとするために、最も簡潔かつ適確に纏められている日本芸術文化振興会発行の本公演のパンフレットから写した。

奥州安達原
陸奥国の豪族安倍氏を陸奥守源頼義・義家親子が討伐した戦(前九年の役)が終結した後を舞台とし、一族の再興を企てる安倍一族と源氏駆け引き、男たちの大望の陰で耐える女たちを描く五段構成の大作です。初演は宝暦十二年(一七六二)九月大坂竹本座で、作者は近松半二ほか。文楽劇場での三段目と四段目の上演は平成二年以来です。

朱雀堤の段
都の中心から離れた朱雀堤、闇夜にうごめく人間模様は、三段目・四段目の双方に繋がる伏線です。

環の宮明御殿の段
帝の弟環の宮の誘拐事件の手掛かりは、宮付きの女官吏の内侍に宛てた書状のみ。宮の守役平傔仗・浜夕夫婦は次女敷妙(八幡太郎義家の妻)の口上から敵味方に別れても敷妙を離縁しないという八幡太郎の意志を察します。そこへ八幡太郎が姿を現します(通称"敷妙上使")。
八幡太郎が公家桂中納言を交えて外が浜の南兵衛と称する安倍宗任を取り調べます。八幡太郎の厳しい究明、歌を詠ませる中納言の意図、源氏の白旗に、矢の根で血染めの歌(「平家物語」剣巻に掲載)を認める宗任の豪胆と、歌をめぐる問答にも謎が込められています。(通称"矢の根")。
父傔仗の窮状を知った長女の袖萩は、娘お君を連れて御殿に推参します。親の許さぬ恋を貫き家を出た袖萩は、夫と生き別れるうちに視力を失い、祭文で生活する身の上。武家の対面を守らねばならない親は、娘に祭文の演奏を命じます。破れ三味線で訴える袖萩、現在の境遇を幼いながらも弁えたお君の振る舞いが哀れを誘います(通称"袖萩祭文")。
袖萩は息子の清童の病死を知らされ、貞任の妻として八幡太郎に繋がる傔仗を討てと宗任に迫られます。ところが父の傔仗は切腹し、娘の袖萩も自害するという悲劇を迎えます。八幡太郎の周到な計略により、書状を手に入れたものの、桂中納言は貞任と正体を表すことになります(通称"貞任物語")。

道行千里の岩田帯
岩田帯は妊婦が安産を願って付ける帯の事。八幡太郎の密命を受けた生駒之助・八重幡姫に恩義を感じる恋絹夫婦は、新たな生命と共に、恋絹の故郷に向かいます。

一つ家の段・谷底の段
各地に伝わる鬼婆伝説の中でも能「安達原」(黒塚)を再現する趣向で、鬼婆岩手が残虐な行為を重ねる理由が物語の中核となっています。
最期を迎える恋絹の心残りは胎内の子の事でしたが、岩手は迷いなく水子を犠牲とします。岩手の意志の強さは亡夫の遺志を継ぎ、息子たちと共に国を興すことにあったのです。全ては十握の宝剣を探索する八幡太郎の掌中あったことを悟った岩手は、自らが手にかけた娘恋絹と孫の許に赴くことを選びます。
新羅三郎義光は義家を補佐する存在で、貞任から剣を受け取り、戦場での再会を約束します。

-平成26年「11月文楽公演」パンフレットより


平成26年度(第69回)文化庁芸術祭主催
国立文楽劇場開場30周年記念
人形浄瑠璃文楽 平成26年 11月文楽公演

第1部(午前11時開演)
双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
堀江相撲場の段/大宝寺町米屋の段/難波裏喧嘩の段
橋本の段/八幡里引窓の段

第2部(午後4時開演)
奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)
朱雀堤の段/環の宮明御殿の段/道行千里の岩田帯/一つ家の段/谷底の段


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