当座の観劇ガイドとするために、最も簡潔かつ適確に纏められている日本芸術文化振興会発行の本公演のパンフレットから写した。
双蝶々曲輪日記
近松門左衛門作享保三年(一七一八)正月大坂竹本座初演「山崎与次兵衛寿の門松」、同十年正月大坂豊竹座初演の「昔米万石通」の人物を用い、大坂市内と近郷を舞台に、全九段に再構成した世話浄瑠璃で、二代竹田出雲、三好松洛、並木千柳による合作です。外題(題名)は、濡髪長五郎と放駒長吉に共通する"長"の音と、二組の遊女とその情婦の物語を読み込んでいます。
堀江相撲場の段
大相撲の関取濡髪とにわか力士の放駒の関係は、濡髪が贔屓筋の身請け話のために放駒に勝を譲った事でこじれてしまいます。
大宝寺町米屋の段
米屋の跡取りながら、家業は姉のお関に任せてきょう侠客気取りの長吉は、仲間を家へ引き入れてしたい放題です。
濡髪と放駒の出入りが決着しようとするところへ、長吉に脅された、物を取られたという人々が現れ、絶体絶命の長吉にお関が真実を語ります。血を分けた姉と、対立していた濡髪の意見が通じ、長吉は分別を付け、濡髪と義兄弟になります。
難波裏喧嘩の段
与五郎は吾妻と足抜けの罪を犯した挙句、難波裏で郷左衛門に捕まってしまいます。駆け付けた長五郎は郷左衛門の凌辱に耐え兼ね、ついに郷左衛門に手をかけ、お尋ね者になってしまうのです。
橋本の段
与五郎は吾妻を連れて、妻のお照の実家橋本の治部衛門は娘可愛さと武家の体面を守るため、娘を離縁するなら二人を匿うつもりです。
与五郎の父与次兵衛は与五郎に厳しく当たる一方で、治部右衛門に対する気兼ねからお照を連れて帰るつもりです。二人の仲裁に入った駕籠舁こそ、吾妻の実父甚兵衛でした。元は一軒の店を構えた程の人物で、娘に身を引くことを迫ります。ところが吾妻にも女として与五郎に恩を受けた義理から別れることができません。吾妻の心根が治部右衛門、与次郎に、信条を曲げてまで子の為に出来ることを探らせます。
八幡里引窓の段
石清水八幡宮に近い八幡の里。明日に迫る放生会と月見の支度に忙しい元代官南方十次兵衛宅。母と嫁のおはやが留守を守る家へ長五郎が現れます。長五郎の意味ありげな言葉は母の心に影を落とします(通称"欠け椀")。
放蕩者であった与兵衛は、新領主の命令で現地に詳しい元代官の家筋として親の名を継ぎ、その仕事始めが長五郎探索の夜の番になりました。全てを察している十次兵衛に、母は長五郎の人相書を売ってくれと頼みます。人として守るべき行動(義理)と人間本来の感情の間で揺れる母は、血の繋がりよりも義理の関係を優先します。その行動が、十次兵衛に意外な行動をとらせるのです。引窓から差す仲秋の名月・放生会と秋の風物が劇の進行に重要な役割を果たしています。
-平成26年「11月文楽公演」パンフレットより
平成26年度(第69回)文化庁芸術祭主催
国立文楽劇場開場30周年記念
人形浄瑠璃文楽 平成26年 11月文楽公演
第1部(午前11時開演)
双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
堀江相撲場の段/大宝寺町米屋の段/難波裏喧嘩の段
橋本の段/八幡里引窓の段
第2部(午後4時開演)
奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)
朱雀堤の段/環の宮明御殿の段/道行千里の岩田帯/一つ家の段/谷底の段
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